10月は2本のLIVEを抱えていて結構ハードだったのですが、ようやく落ち着いたのでブログにまとめてみようと思います。

今日のブログではその内の1本目についてレポートさせて頂きます。

1本目は10月13日(日)に行った京都公演。10月にOPENしたヴィンテージピアノショップ Kayacc Klavier様のオープニングセレモニーでの演奏です。

↓↓Kayacc Klavier 様のホームページはこちら↓↓

Wanderlust(旅、放浪)をテーマにしたシリーズ企画の内1つを任されたので、「世界の絶景画像をスクリーンに映しながらの即興演奏」や、「百人一首から選んだ歌に合わせた即興演奏」など、即興企画を中心に構成しました。

ライブレポートの前に、今回お声がけ頂いたKayacc Klavier様の紹介からさせてください。

Kayacc Klavier様は、合唱・ピアノ譜の出版・販売を30年以上手掛けてきた老舗、パナムジカが開いた中古輸入ピアノのお店です。一口に中古と言っても、「安かろう悪かろう」から「こだわりのヴィンテージ」まで幅がありますが、Kayacc Kalavierは後者です。世界三大ピアノメーカーと言われる、スタインウェイベーゼンドルファーベヒシュタインという一流メーカーの製品を中心に、数々のヴィンテージピアノが揃えてあり、それらが一同に並んだショールームはピアノ愛好家にとっては夢のような空間です。

当然、お値段もそれなりの感じにはなります。しかし、「良い品物を少しでもリーズナブルに届けたい!」という想いから、ピアノ流通(海外からのピアノ買い付け → 輸送 → 国内工房でのオーバーホール、それに伴うメーカー純正品の部品調達)に関わる工程一つひとつについて、徹底的なコスト効率を実現するための工夫がされており、その仕組みにより、世界トップブランドのピアノが物によっては500万円を切るという驚きの価格設定での提供が可能になっているのです。

あまり詳しくは書けませんが、この辺りの商売上の工夫を吉田社長に直接伺わせて頂き、とても勉強になりました。他所で同じクオリティーのピアノを求めれば、100万円は割高になるでしょう。この価格差の裏には、流通の仕組みを徹底的に研究して完成させたシステムがあるのです。このあたり、面白い話を色々訊いたので、色々書きたいのは山々ですが、ご興味あればKayacc Klavier様に直接尋ねてみてください。適正価格実現のロジックに大いに納得される事でしょう。

さて、そろそろLIVEレポートに移ります。

LIVEは、Kayacc Klavier様の1階にあるホールにて行いました。

ステージ上には、2台のハンブルグ製スタインウェイ

そして、客席の中にも、もう1台のニューヨーク製スタインウェイ

同じスタインウェイでも、ピアノによって個体差があり、筐体から生み出される音色は一台一台異なります。

よほど恵まれたシチュエーションを除けば、ピアニストは基本的に演奏会場のピアノを選べません。それなりの会場であれば整音、調律、整調のコンディションが良い状態のピアノで演奏に臨むことはできますが、演奏する曲に合わせて、ピアノを使い分けられる機会はまずありません。

しかし、今回のKayacc Klavier様のオープニングイベントでは、そんな贅沢が可能でした。画家が自分の求めるタッチに合わせて、筆や顔料の種類を使い分けるように、自分の欲しい音色に合わせてピアノ自体を使い分けられる事という稀有なシチュエーションで演奏する事ができたのです。

冒頭でも述べましたが今回のLIVEは、即興演奏を中心にプログラムを組み立てました。

スクリーンに映しだされる世界の絶景画像や、お客様から頂いたテーマ(この日は「アラジンの魔法のランプのような感じ」とか、「今日の日のためのお祝いの曲」などのリクエストがありました)、それぞれに対して浮かんだインスピレーションを音に反映させる事が必要になります。もちろん、私もある程度の訓練を積んでいるので、タッチを工夫し音色に反映することで多少の表現はできますが、求めるイメージに最も近いピアノを選べるというのは、即興企画の場合、この上ないアドバンテージになるのです。

今回の会場での、このあたりの様子を、少し掘り下げて説明させて頂くと、こんな感じになります。

華やかでリッチな響きが欲しい時は、ハンブルグ・スタインウェイのA型(188㎝、700万円相当)

楽しく軽妙な雰囲気を出したい時は、一回り小さいハンブルグ・スタインウェイのO型(180㎝、600万円相当)

少しマットで渋い質感で弾きたい時は、ニューヨーク・スタインウェイのM型(170㎝、500万円相当)

このように曲目ごとに自由にピアノを選び演奏できるのは極めて珍しい事です。

即興企画というのはコワい所もあって、冴えたコンディションの時は、イメージやインスピレーションが泉のように湧いてくるので、思ったまま演奏すれば良いのですが、辺に緊張し過ぎたり、妙な雰囲気に飲まれるともうダメです。なんとか形にしようと、理論中心に頭ばかりで考えてしまい、音に心や魂がまったく入らない演奏になってしまいます。

その意味で、即興演奏をプログラムに組み込む際は、自身のコンディションを調整しベストに持っていけるかが成否を分かつ重要なカギになるのですが、今回はピアノに大きく助けられました。

本当に良いピアノと向かい合えば、演奏しながらピアノと対話することで、次に出すべき音(音量、音質、音色、即興の場合は構成音そのもの)をピアノが教えてくれる、今回のステージではそのような心強さがありました。

今回のLIVEで得られたこの感覚は、本当に貴重な経験であり、ピアノ自体から教わった忘れられないレッスンでもあります。

このような機会をくださったKayacc Klavier様に本当に感謝するとともに、ぜひこれを読んで頂いている皆さまにも、この感覚を味わって欲しいと思います。

Kayacc Klavierのキャッチフレーズは “Find Your Own”

京都にお越しの際は、ぜひKayacc Klavierにも足をお運び頂いて、ショールームで色々なピアノと対話なさってみてください。貴方のインスピレーションを触発する素敵なピアノに出会えるかもしれませんよ♪

今回はこんな所で。

江古田Music School 

岩倉 康浩